化粧品を選ぶ前に
カウンセリング時、「一度やめてみてください。」そうお伝えすると「・・・化粧水も乳液もですか?」と、皆様とても不思議そうな顔をされます。私の元へお肌のご相談にいらっしゃる多くの方々が、薬用。オーガニック、高級ブランドと、ありとあらゆるものを試している、いわばスキンケアジプシー。乾燥が酷く、皮膚科に通っていても改善しなかった。というケースも少なくありません。
肌トラブルの状態は違えど、悩みの最終地点は同じ。
「何が自分の肌に合うのかがわからない」
デパートのコスメカウンターに並ぶ、美しい装飾が施された高級クリームや、その肩書だけで効果を期待出来そうなドクターズコスメ。
薬効イメージの強い植物エキス配合と書かれた化粧水に、瞬間美白と謳う美容液。。。
ここにあげたものだけでも一度は手にしたことがあるのではないでしょうか。
では一体何を選び、どう使えばいいのか。
一日で肌が生まれ変わるような化粧品や、全ての願いを叶える美容法はありません。
肌の仕組みを知り、眠っている肌本来の機能を目覚めさせる準備をしていきましょう。
今すぐと焦らず、大切な人を想うようにゆっくりと時間をかけて。。。
クレンジングをやめる
肌には本来、乾燥や肌荒れを引き起こす原因となる外部刺激から肌を守るための働きが備わっています。
このことを「肌のバリア機能」といいます。その中でも要となる第一、第ニのバリア。
肌の表面を覆う皮脂は毛穴部分にある皮脂腺から分泌される油です。
皮脂という油がつくる膜が皮脂膜という「第一のバリア」。お風呂やプールに入ると皮膚は水をはじきますよね。
健康的な皮膚ほど強く水をはじくのは皮脂膜にしっかりと覆われているから。
そして「第二のバリア」とよばれる角質層には水分保持に欠かせないセラミド(角質細胞間脂質)が存在し、角質細胞の隙間をぴったりと埋めています。
健康な皮膚のバリア機能(上部図)
角質のバリア機能はセラミドの量と関係し、セラミドなどの角質細胞間脂質が減少するとバリア機能も弱まります。
外からの物質(アレルゲン、ウイスル、細菌、有害物)の侵入を防ぎ、水分の蒸発を防ぐことができるのは、バリア機能が正常な状態であってこそ。
皮膚のバリアが壊れた肌(上部図)
バリア機能が壊れてしまった肌は防御壁を失い、全ての刺激を受けやすくなります。では、どのようにしてバリア機能が壊れるのか。
界面活性剤という言葉を耳にしたことはありませんか?界面活性剤とは本来混ざり合うはずのない水と油を結びつけるためのもの。
洗浄に利用した場合には洗浄剤、肌に水や美白剤などを浸透させる時には浸透剤、乳液やクリームのように乳化に用いた場合は乳化剤とも呼ばれ、科学的につくられた界面活性剤のことを「合成界面活性剤」といいます。
化粧品の多くに配合される合成界面活性剤。化粧品の使用アイテムが増えれば増えるほど肌は刺激を受けている状態になります。
その中でも、クレンジング剤には油汚れと水を混ぜて捨てる洗浄剤(親水性の強い界面活性剤)がたくさん含まれていることが多く、健康な肌に必要な油分を流出させてしまいます。そして、クレンジング後の肌は皮脂がなくなり、角層のタンパクは変性され水分が蒸発。
肌バリアの要である皮脂と角層という2本の柱を失ったその無防備な状態に浸透系化粧品を使えば刺激が強すぎて肌が対応しきれなくなり、トラブルの元となる要因を作りだしていきます。
*浸透系化粧品(潤いを謳った化粧水や乳液等)・・・有効成分を浸透させるのにバリア機能を壊さずして浸透させることが出来ないため。
日常的に何気なく繰り返すクレンジング洗顔が過剰洗顔となり、潤いや美白に重点をおいたスキンケアをする。
この繰り返しこそが私達の肌を守るバリア機能を壊し、刺激に耐えられない肌を作っていくのです。
「与える前に考えなければいけないこと」
健やかな肌づくりの基本でもある洗顔を見直し、皮膚本来が持っている機能を正常に働かせる。
本当の潤いは、自分の中からつくりだせるのです。
石けんで守る
石けんも界面活性剤の一種です。
「界面活性剤は肌に負担になる」なのに何故石けんは安全なのか。その答えは石けんと肌の関係性にあります。
石けんはアルカリ性であるのに対して、肌は弱酸性です。このことから洗顔したあとの石けん成分は皮膚の酸によって中和され、洗浄力を失い、その力をなくします。界面活性剤の中では、このアルカリ性の性質を持つ石けんのみが洗顔後の肌に界面活性剤を残しません。
クレンジング剤・・・皮脂や角質層のバリア機能を失う。
石けん洗顔・・・皮脂や角質層のバリア機能を流出させない。
石けん洗顔は角質を大切にする→ターンオーバーの正常化に繋がる→表皮の生まれ変わりを優しく促す。
石けんこそが皮膚のバリア機能を守ることのできる唯一の洗顔法です。